2023年2月中旬、種石くんとの6年前の宿題にようやく方を付けることができた。
6年前、荒沢奥壁を登った後、それにちょっと満足してしまい、翌日は天候の悪さ(風の強さ)を理由に下山。それからまたリベンジしようと言って6年も経った。山は逃げないというが、山に行かなければ山は逃げる。チャンスを逃せばそのルートに一生取り付くこともないかもしれない。山は逃げないというのは自分が逃げているんだと思う。 6年という年月でお互いの環境も変わり、少し山から離れてしまった時期もあったが、またパートナーを組み、完登することができた。良い登山であった。改めて種石くんにはお礼を言いたい。 記憶が明るいうちに、載せたいと思う。なんなら種石くんの記録をそのままコピペしたいくらいだけど、一応自分の言葉で書こうと思う。当たり前か。 2023年2月17日鹿島槍ヶ岳北壁中央ルンゼ完登 その前日、実は唐沢幕岩正面壁の中央ルンゼを狙っていた2人だが、高瀬ダムまで来たところで氷が無いことが遠目に見てわかり、転戦を決める。馬目さんが絶賛するルートということなので、ぜひとも今後狙っていきたい。 駐車場に戻りながら、天気の安定さを考慮し鹿島槍なら近いし、中央ルンゼ行けるんじゃないかということで、鹿島槍を転戦先に決めた。 その日はラッセルに苦しみながらテン場までアプローチのみ。 翌日北壁トライ。 長いトラバースをこなし、中央ルンゼの取付きへ向かう。雪も思った以上に締まってて順調だと思っていると、陽に当たり始めた対岸で大きな雪崩が轟音とともに流れていた。こちらに影響は全く無いので、それを眺めながら気を引き締めた。 9:30 中央ルンゼ登攀開始 1ピッチ目 アイス〜雪壁 60m種石リード 垂直に近い氷を登っていく。しかし、問題は強烈なスノーシャワーだ。フォローでも大変だったけど、そこを安定のクライミングで超えていく種石くん。ここ最近で一番冬壁を登ってるのは彼なんじゃないかなと思いながらフォローする。 2ピッチ目 雪壁〜チムニーアイス(簡単)70m青木リード 雪壁をぐいぐい詰めていき、気づいたらチムニーのアイスも乗っ越して最初の核心ピッチのビレーポイントまで。 3ピッチ目 ミックス(M5)25m種石リード 出だしルンゼ内を上がり、途中からミックスへ入る。雪掻きが大変そうだが、プロテクションもしっかり取れ、掘り当てた割れ目にアックスをかけて上がっていく。最後は傾斜が強くなり、思い切って乗っ越す。フォローも楽しめるピッチ。 4ピッチ目 ミックス?(M5R)30m青木リード 雪がうっすら乗った垂壁。雪を掻いても手がかりが出てこない。5mほど登ってクライムダウン、ラインを少し変えるもやはり手がかりがなく、少し引っかかってるアックスを信じてハイステップで上がっていく。頼りにしていたリスは、トルキングで剥がれ落ち、プロテクションも取れずにメンタルだけが削れて行く。草付きも浅く、すぐに岩に当たってしまう。行くか?どうする?行くしかない!と、これまで登ってきたメンタル削る系の冬壁での経験を信じ、絶対いけるという気持ちで登った。 プアプロとランナウトに耐え、刺さりの良くなった草付きまでくると、一気に安堵感が来た。もう大丈夫だ。最後は雪壁を詰め、ビレーポイントまで。アックス1本とハーケン2枚でビレー。このピッチは普段はベルグラがはるようだ。 5ピッチ目 三重きのこ雪(グレードじゃないR)30m種石リード ビレーポイントから見上げても分かる、被ったきのこ雪。後で3重に連なっていたことが判明。すぐそこは雪稜であとは頂上へ詰めるだけだったが、このきのこ雪を突破せねば雪稜に上がれない。種石くん頼んだ!という気持ちで彼を送り出した。 案の定かなり苦戦。崩して崩してそれでも崩していく。時間と不安が積み重なっていく。きのこ雪の下部に入るとそのオーバーハングさが顕著になる。デカすぎでしょ!!懸命な除雪登攀の末、遂にきのこ雪に穴が開き始めた。穴に潜り込むように消えて行く。「うおおぉぉーーーっ!!」四つん這いでの雄叫びから、彼の気合の乗っ越しが目に浮かぶ。思わずガンバ!と叫んだ。しばらくしてビレー解除のコールが聞こえると彼を早く讃えたくなった。フォローには時間をかけまいとなるべく早く登る。三重のきのこ雪の除雪跡は、よくこんな所登ったなーと本当に感心してしまう。本当にナイスクライミング! 雪稜でスタンディングアックスビレーをしている種石くんと合流して、まだ山頂についてもいないのに肩を叩き抱き合った。それくらい最後の2ピッチは気合が入った。 そこから山頂へはダラダラと登り、山頂についた頃には日も暮れてしまった。 「ここからが重要、しっかり安全にテントまで下ろう。」とお互い声を掛け合って下山開始。 案の定、何度か下る尾根を間違えては登り返し、ようやくテントについた。これで一安心。 唐沢幕岩からの転戦は大きな経験値を得ることができた。 山は逃げない。いや、追わないといけないんだ。
by timmy-climber
| 2023-02-26 00:05
| アルパインクライミング
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